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東京地方裁判所 平成9年(特わ)3910号・平9年(特わ)4177号

右の者に対する所得税法違反、相続税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官髙畠久尚、同岩山伸二及び弁護人刀根国郎各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金五〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人は、分離前の相被告人鈴木由美子及び同鈴木直美が、神奈川県相模原市橋本五丁目二九番八号に居住していた同人らの実父鈴木直吉の死亡により同人の財産を共同相続したことに関し、鈴木由美子、鈴木直美、分離前の相被告人柴山幸三及び同村岡紀英と共謀の上、鈴木由美子及び鈴木直美の相続税を免れようと企て、鈴木由美子及び鈴木直美の正規の相続税課税価格は合計八億四八八四万九〇〇〇円で、このうち鈴木由美子分の正規の相続税課税価格は四億四二四八万五〇〇〇円、鈴木直美分の正規の相続税課税価格は四億〇六三六万四〇〇〇円であった(別紙1の相続財産の内訳参照)にもかかわらず、平成七年一一月二七日、同市富士見六丁目四番一四号所轄相模原税務署において、同税務署長に対し、村岡において、相続財産である土地の地積及び価額を過少に計上し、割引債券等の一部を除外するなどして、相続税課税価格を減少させる方法により作成された、鈴木由美子及び鈴木直美の相続税課税価格が合計三億八八四四万一〇〇〇円で、このうち鈴木由美子分の相続税課税価格は二億〇四〇四万九〇〇〇円、鈴木直美分の相続税課税価格は一億八四三九万二〇〇〇円であり、これに対する鈴木由美子の相続税額は五一三九万七二〇〇円、鈴木直美の相続税額は四五五七万八七〇〇円である旨の虚偽の相続税申告書(平成一〇年押第四六二号の1)を提出し、そのまま法定納期眼を徒過させ、不正の行為により、鈴木由美子の正規の相続税額一億六六二九万九七〇〇円と同人の右申告相続税額との差額一億一四九〇万二五〇〇円(別紙2の脱税額計算書参照)を免れるとともに、鈴木直美の正規の相続税額一億五二七二万四二〇〇円と同人の右申告相続税額との差額一億〇七一四万五五〇〇円(別紙2の脱税額計算書参照)を免れたものである。

第二  被告人は、東京都町田市中町二丁目二一番一五号に居住している分離前の相被告人五十子紀七郎が平成七年同市原町田六丁目一一三〇番地一ないし三の各土地の共有持分を売却譲渡したことに関し、五十子、分離前の相被告人柴山及び同村岡と共謀の上、五十子の同年分の所得税を免れようと企て、右譲渡について、架空の売却手数料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、実際は、同年分の総所得金額が二六六万八九八七円の損失、右損失と損益通算した後の分離課税の短期譲渡所得金額が三五八万二一二一円、分離課税の長期譲渡所得金額が七億三三一五万〇八七五円であった(別紙3の所得金額総括表及び修正損益計算書参照)にもかかわらず、平成八年三月一二日、同市中町三丁目三番六号所轄町田税務署において、同税務署長に対し、柴山において、五十子の平成七年分の分離課税の長期譲渡所得金額が二億〇五一一万〇九三八円で、これに対する所得税額が五九四八万三〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成一〇年押第四六九号の7)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二億一八四二万五四〇〇円と右申告税額との差額一億五八九四万二四〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

(括弧内のA甲乙の番号は平成九年特(わ)第三九一〇号所得税法違反被告事件の証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を、B甲乙の番号は平成九年特(わ)第四一七七号相続税法違反被告事件の証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号をそれぞれ示す。)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

判示第一の事実について

一  被告人の検察官調書(B乙一三)

一  平成九年特(わ)第四一七七号相続税法違反被告事件第一回公判調書中の被告人の供述部分

一  前記公判調書中の分離前の相被告人柴山幸三及び同村岡紀英の各供述部分

一  分離前の相被告人鈴木由美子(二通、B乙二、三)、同鈴木直美(三通、B乙六ないし八)、柴山幸三(B乙三二)及び村岡紀英(B乙六三)の各検察官調書

一  鈴木進(B甲一〇)及び佐野榮一(B甲一三)の各検察官調書

一  大蔵事務官作成の土地調査書(B甲一)、家屋・構築物調査書(B甲二)、出資金調査書(B甲三)、割引債券調査書(B甲四)、現金調査書(B甲五)、預貯金調査書(B甲六)、家庭用財産調査書(B甲七)、その他の財産調査書(B甲八)並びに債務及び葬式費用調査書(B甲九)

一  相模原市長作成の戸籍謄本(B乙九)

一  検察事務官作成の捜査報告書(B甲一七)

一  相模原税務署長作成の証拠品提出書(B甲一八)

一  大蔵事務官作成の領置てん末書(B甲一九)

一  押収してある相続税の申告書(被相続人鈴木直吉)一袋

(平成一〇年押第四六二号の1)

判示第二の事実について

一  被告人の検察官調書(二通、A乙五八(謄本)、五九)

一  平成九年特(わ)第三九一〇号所得税法違反被告事件第一回公判調書中の被告人の供述部分

一  前記公判調書中の分離前の相被告人五十子紀七郎、同柴山幸三及び同村岡紀英の各供述部分

一  五十子紀七郎(三通、A乙三八ないし四〇)、柴山幸三(A乙四六)及び村岡紀英(二通、A乙七三、七四)の各検察官調書

一  佐野榮一の検察官調書謄本(A甲五一)

一  大蔵事務官作成の給与収入調査書(A甲三五)、給与所得控除調査書(A甲三六)、不動産収入調査書(A甲三七)、必要経費(不動産所得)調査書(A甲三八)、保険代理収入調査書(A甲三九)、必要経費(雑所得)調査書(A甲四〇)、譲渡収入金額(短期譲渡所得)調査書(A甲四一)、取得費(短期譲渡所得)調査書(A甲四二)、譲渡費用(短期譲渡所得)調査書(A甲四三)、譲渡収入金額(長期譲渡所得)調査書(A甲四四)、取得費(長期譲渡所得)調査書(A甲四五)、譲渡費用(長期譲渡所得)調査書(A甲四六)、社会保険料控除調査書(A甲四七)、生命保険料控除調査書(A甲四八)、損害保険料控除調査書(A甲四九)及び扶養控除調査害(A甲五〇)

一  検察事務官作成の捜査報告書(A甲五三)

一  町田税務署長作成の証拠品提出書(A甲五四)

一  大蔵事務官作成の領置てん末書(A甲五五)

一  押収してある平成七年分の所得税の確定申告書(分離課税用)(六十子紀七郎)一袋(平成一〇年押第四六九号の7)及び譲渡内容についてのお尋ね(五十子紀七郎)一袋(同押号の8)

(法令の適用)

一  罰条 判示第一の所為につき各納税義務者ごとに刑法六五条一項、六〇条、相続税法六八条一項

判示第二の所為につき刑法六五条一項、六〇条、平成一〇年法律第二四号による改正前の所得税法二三八条一項

二  科刑上一罪の処理 判示第一につき刑法五四条一項前段、一〇条(一罪として犯情の重い鈴木由美子の相続税ほ脱の罪の刑で処断)

三  刑種の選択 判示各罪につきいずれも懲役刑及び罰金刑を併科

四  併合罪の処理 刑法四五条前段

懲役刑について 刑法四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の罪の懲役刑に法定の加重)

罰金刑について 刑法四八条二項(判示各罪所定の罰金の多額を合計)

五  労役場留置 刑法一八条(金一万円を一日に換算)

六  執行猶予 懲役刑につき刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、被告人が、それぞれ脱税諸員人ら及び納税義務者の二名又は一名と共謀の上、納税義務者二名の相続税を免れ、納税義務者一名の所得税を免れたという事案である。

本件各犯行のほ脱税額の合計は三億八〇〇〇万円余りと多額であり、右ほ脱税額の合計が正規の税額の合計に占める割合も約七〇パーセントと見過ごすことができるものではなく、脱税の態様は、格別の裏付けもないのに、相続財産である土地の地積及び価額を過少に計上したり、あるいは不動産の譲渡所得につき約五億円もの売却手数料を架空計上するなどしたというものであり、本件各犯行は、申告納税制度を悪用し、手段を選ばずに行われた大胆なものである。本件各犯行は、いずれも村岡紀英を中心とした脱税請負人グループによって組織的に敢行されているところ、被告人は、報酬を得る目的で本件各犯行に関与し、虚偽の申告書の作成者と村岡との仲介役として、比較的重要な役割を果たし、所得税法違反の犯行においては、売却手数料の計上先として休眠状態にあった有限会社を村岡に紹介している。被告人には、これまでに有価証券偽造・同行使、詐欺、道路交通法違反、横領等の懲役前科四犯(いずれも執行猶予付き)があり、本件各犯行は最終の詐欺罪の刑の執行猶予中に行われていることなどを併せ考えると、被告人の刑事責任は重いというべきである。

他方、被告人は、村岡が中心となって行っていた組織的な犯行のなかで、主体的に税額や脱税の方法等の決定を行っていたわけではなく、村岡の指示を虚偽の申告書の作成者に伝えているにすぎず、村岡及び柴山と比較してはるかに従属的な役割を果たしていることは明らかである上、本件各犯行により利得した報酬も合計で一〇〇万円にとどまっている。また、被告人は、本件各犯行を認め、反省の態度を示している上、本件で勾留中、急性膵炎になり、入院して手術を受け、現在も通院中であるところ、最近、知人が経営する観光会社で臨時社員として働き始め、被告人の妻ら被告人の家族も被告人が立ち直っていくことに期待を寄せているなど、被告人に有利に考慮すべき事情も認められる。

そこで、これらの事情から、被告人を主文の各刑に処した上、その懲役刑の執行を猶予することとした。

(求刑懲役一〇月、罰金六〇万円)

(裁判長裁判官 山口雅髙 裁判官 下津健司 裁判官成川洋司は、差し支えのため署名押印できない。裁判長裁判官 山口雅髙)

別紙1

相続財産の内訳

平成7年3月10日現在

鈴木由美子、鈴木直美

<省略>

※鈴木直美分の預貯金の公表金額は、申告書の第11表の合計では7,433,026円であるが、同表中に2円記載漏れがあり、7,433,028円でないと第1表の各人合計及び同女分の取得財産の価格及び純資産価額の公表金額にならないため、同額とした。

別紙2

脱税額計算書

納税者 鈴木由美子

<省略>

納税者 鈴木直美

<省略>

※ 各人の納付すべき税額の総額欄は各相続人の税額の合計金額であり、各相続人の計算過程において、切り捨て計算をするため、総合で計算した税額とは一致しない。

別紙3

所得金額総括表

自 平成7年1月1日

至 平成7年12月31日

五十子紀七郎

<省略>

修正損益計算書

自 平成7年1月1日

自 平成7年12月31日

五十子紀七郎

<省略>

別紙4

ほ脱税額計算書

五十子紀七郎

<省略>

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